石畳の下は砂浜だ


 1968年。フランスで学生反乱が起り、世界中の大学へと波及していった。ことの発端は1966年、ストラスブール大学で起こった大学当局に対する民主化要求運動に他ならなかった。しかしこの運動は、当時のド・ゴール政権がベトナム戦争へ加担したことへの反対運動と結びつき、さらに、パリ大学の学生自治民主化運動へと展開していった。
 彼らの発したスローガンは、「石畳の下は砂浜だ」(Sous les pav'es,la plage)というものだった。学生たちは大学を占拠し、学生街であるカルチェラタンの敷石をはがし、バリケードを築いたのである。街の石畳の敷石をはがしたあとに現れた砂地に、彼らは限りない自由を想像したのである。この動きにフランス全土の労働者が呼応し、戦後最大規模のゼネストに突入した。事態の収拾をはかるため、ド・ゴールは議会を解散し総選挙を行っただけでなく、労働者の団結権ばかりか、大学の民主化、大学の学生による自治権の承認、大学の主体は学生であることを法的に認めざるを得なくなったのである。
 新世代の台頭。これを「20世紀のルネッサンス運動」という者もいる。新しい社会を市民が想像し、それを実現していく。「想像力が権力をとる」というラジカルな発想は、21世紀には「市民知」とかたちを変え、今後の市民社会への発展にむけて大きな力のひとつとなるであろう。(写真はBruno Barbey氏による)